Dioxin Food Crises and New POPs: Challenges in Analyses ダイオキシンによる食品汚染事故と新たな残留性有機汚染物質:分析における挑戦 Jef Focant  ダイオキシンによる汚染事故として知られている最初の事故は、1957年後期にアメリカ東部・中西部で起こった、 100万羽以上のブロイラー(食用若鶏)の大量死事件である。1999年にベルギーで起こった鶏肉ダイオキシン汚染事件は、 このような汚染事件が経済的な悪影響を与えることを如実に示し、またEU(欧州連合)を押し動かして、ヨーロッパの 食品や飼料の品質を適正に維持するための有効かつ事前予防的なモニタリングプログラムの実施や、多数の人々のダイ オキシン摂取量を耐用量未満に維持するべく努めることに向かわせた。欧州委員会では現在、最大残留基準(特定の 塩素化ジベンゾ-p-ジオキシン(PCDD)、塩素化ジベンゾフラン(PCDFs)(両者は合わせて「ダイオキシン類」と呼ばれる)、 およびダイオキシン様ポリ塩素化ビフェニル(DL-PCBs)について)の手法を採用している。  食品や飼料中のダイオキシン類、DL-PCBsの濃度について、包括的で信頼できるデータを適切に得るために、ダイオキ シン類の公的な規制においては、かなり早い時期から「スクリーニング−確定」アプローチが採用された。実際には、ス クリーニングにはCALUX(chemical activated luciferase gene expression、化学物質によるルシフェラーゼ遺伝子発現) バイオアッセイや、芳香族炭化水素受容体(AhR)を用いた受容体結合アッセイ(receptor-binding assays、RBA)が用い られる。一方、唯一の確定試験法として、13Cラベル化体を用いた同位体希釈−セクター型高分解能ガスクロマトグラフ 質量分析法 (gas chromatography coupled to 13C-labeled isotope dilution sector high resolution mass spectrometry、 GC-IDHRMS) がある。「スクリーニング−確定」アプローチが採用されて10年以上が経ち、分析の状況は大きく進化した。 これは、自動化や試料前処理の多検体同時進行化の進歩により、費用および分析にかかる時間の両方が確定試験法(GC-IDHRMS) と比べて著しく減少した(費用は350ユーロまで低下、時間は24時間まで短縮)ことによる。  受容体結合アッセイ(RBA)は今日、「ダイオキシン類についての法規制に適合しているか否か」の情報を得るためだけに 用いられるにとどまらず、(対象試料中に存在するほぼ全ての有毒物質をAhRと相互作用させることを可能とするような試料 前処理技術と共に適用されることによって)試料中の全ての残留性有機汚染物質(POPs)による毒性の総合的な情報を得る ために用いることができるし、また用いられるべきである。これは、生物学的な観点からはより適切と考えられるし、また、 現在行われている食品安全対策を、既知あるいは未知のPOPsに拡大することを可能とする。生物学的スクリーニング測定で 高い反応性を示した試料については、その新化合物を同定するために、詳細な分析を行うべきである。私たちが食べる食品 中に存在する、注目すべき化合物のリストを、残留性が疑われる(あるいは疑われていなかった)「外来の」化合物に拡張 していくためには、クロマトグラフ的な分離能力と装置の検出下限(iLOD)の両方の改良が必要である。  包括的2次元GC(comprehensive two-dimensional GC、GCxGC)あるいは低温帯域圧縮(cryogenic zone compression、CZC) GCを連結した、飛行時間型高分解能MS(HR time-of-flight MS、HRTOFMS)によるフルスキャン測定は、これまでに「特定の 目的化合物のみを測定する方法」として用いられてきた「GC−セクター型HRMSによる選択イオンモニタリング(selected ion monitoring、SIM)測定」を補うことが可能である。この測定法は、現在の規制対象となっていない他の化合物(有機塩素系農薬、 ハロゲン系難燃剤、GCで測定が可能なペルフルオロ化合物)を、感度を下げることなく検査する可能性を開く。最近のGCxGC- HRTOFMSの進歩は、このアプローチを前進させ、複雑な混合物中に存在する未知化合物の元素組成に関する情報を得ることを 可能にしている。さらに、ハロゲン化合物については、共鳴電子捕獲(resonance electron capture、REC)による負イオン 化学イオン化(negative chemical ionization、NCI)法は、電子衝撃(electron impact、EI)法と比較して、感度が大幅に 向上(装置LODでfg)することにより、このようなシステムが可能となる。新たに注目されるようになった、GCで測定が可能 なPOPsの、GC-MSによる分析技術の最近の主要な進歩について、「食品の安全性確保を目的とした、新規対象化合物の優先 順位付け」という観点から述べる。