Powerful GC-ToF-MS Techniques for Quantification of Legacy Pollutants and Screening and Identification of Emerging Pollutants 既存の汚染物質の定量、および新たな汚染物質のスクリーニングと同定にとって強力な、GC-TOF-MS技術 Peter S. Haglund, Conny Danielsson, Mikael Harju, Patricia Moreira-Bastos, Ulrika Olofsson  環境試料はしばしば、挑戦しがいのある課題を分析化学者に与える。対象化合物は一般的に、天然および人工の多くの化合物の複雑な 混合物の中に、ごく微量にしか存在しない。このようなごく微量の化合物を正確に定量するためには、バックグラウンドを低減する他、 分析対象化合物をマトリックスから効果的に分離することも重要である。多検体同時の抽出およびクリーンアップのような、試料前処理 の効率化についても進歩が見られるが、ここでは、既存および新規の汚染物質の定性および定量分析のための、強力なGC-MS法について 述べる。  この10年で、包括的2次元GC(comprehensive two-dimensional GC、GC×GC)は、異種化合物の分離にとどまらず同族化合物同士の分離 (異性体の分離)も可能とする、頑健で格別に強力な技術に発展した。石油系炭化水素の化合物群間分離は、最初の、そして最も重要な 応用領域の1つであった。異性体の分離に関して、必要性の高い課題の1つに、PCB異性体(209種)やダイオキシン類異性体(PCDD/Fs、 210種)の完全分離がある。探究は続いているが、高度な分離が可能となっている。現在、ダイオキシン様PCB(dioxin-like PCBs)を other PCBと分離し、かつ個々のDL-PCB異性体ごとに完全分離することができる。ダイオキシン類も同様に、全ての2,3,7,8-置換異性体 を他のPCDD/Fs異性体から完全分離することができる。アトロプ異性体(atropisomers、不斉炭素を持つトリオルト、テトラオルトPCBs) の鏡像異性体選択的(enantioselective)分析ですら可能となっている。しかし、使用するカラムの注意深い選択と最適化が重要である。 PCBsやPCDD/Fsの分析においては、長い無極性のカラムを前段に、形状選択性を持つ液晶のカラムを後段に接続した2次元カラムが最も 良い結果を与える。一方、アトロプ異性体の分析においては、前段のカラムはペルメチル化シクロデキストリン(permethylated cyclodextrin)カラムに変更する必要がある。これらの分離過程においては、対象化合物は妨害物よりも強く(あるいは弱く)液晶相 カラムに保持される。  その高いピーク容量(peak capacity)によって、GCxGC-TOFMSは、複雑な試料(汚染サイト土壌の抽出液、あるいは下水処理場からの 排水など)中の化学物質の包括的なキャラクタリゼーションに用いることも可能である。しかし、このような「対象を限定しない」分析 手法で検出・仮同定される化合物の数は途方もないものとなる。そのため、このような研究手法を実現可能とするためには、これらを 論理的かつ有効に優先順位付けする手法が必要となる。近年、「リスクに基づいた優先順位付け(risk-based prioritization)」と 「特性に基づいた類別(property-based classification)」の2つの異なったアプローチが検討されている。汚染土壌抽出物から仮同定 された化合物について、定量的構造活性相関(quantitative structure-activity relationships)が適用され、その濃度定量値は、無 作用量(no-effect level)の推定値と比較されることにより、リスク比(risk-ratio)が求められる。リスク比が高い値となった化合物 は全て、確定分析に関する高い優先順位が与えられる。そして、(確定分析により)それが確定的となった場合は、土壌汚染によって 影響を受ける可能性のある生物について、さらなる調査分析が行われる。「特性に基づいた類別」は、比率の算出(下水処理場における、 放流水中濃度/流入下水中濃度)を基礎としている。この比が1よりも十分小さい合物は、十分に除去されていると言える。一方、この比 が1に近い化合物は、ほとんど除去されていない。1以上の場合は、むしろ処理過程において生成していることになる。このようにして、 ほとんど除去されないと類別された化合物や、確認された代謝物などに関する知見は、既存施設の改良や下水処理の新たなプロセスの設計 において有用な知見となるだろう。  化合物の完全な確定には標準物質が必要となるが、超高分解能TOF-MSのような新たなGC-MS技術が、価値の高い情報を得るために用いられ るようになるだろう。このような技術では、質量分解能50,000、質量精度1ppmの条件でのフルスキャンスペクトルが取得できる。この条件 ならば、質量単位約150uのイオンの元素組成を明確に決定できる(同位体存在比を考慮すれば500u程度まで到達可能だろう)。これは、 予想した分子式が正しいか否かを決定するのに十分な情報であり、これにより、人間の手による正確な同定の可能性が大きく向上する。  新たな視点:2次元ガスクロマトグラフィーと超高分解能質量分析装置は、ピーク容量、質量分解能、質量精度に優れており、環境分析に おいて新たな可能性をもたらす。